『ダイヤのA』第3巻

『『エース不在』の青道高校で、一年生からも投手を発掘するために組まれた上級生との試合。圧倒的な上級生の力になす術もない一年生チームの雰囲気を変えたのは沢村だった! 勝利への執念を見た監督は沢村をマウンドへ上がるように指示。待ちに待った登板に燃える沢村だったが、同室の先輩・増子との真剣勝負にレギュラーどりの厳しさを思い知る…!?』

単行本第3巻 表4あらすじより

 

何故『思い知る…!?』と煽ってくるのでしょうか。

そんな疑問を抱きつつ第3巻の感想です。

 

第14話「真のエース」~第22話「捕手の役目」収録

 

第14話「真のエース」
金丸デレました。ここから「ダイヤらしさ」が本格的に始まったと言っても過言ではない回であります。青道は悪い場所ではない。野球を志すものにとっては幸福とも言える場所であることが垣間見えてくるからです。

上級生達を一喝する伊佐敷純さん、登場。
『恥ずかしい試合しているな~~情けない』笑顔で毒舌な小湊亮介さん。代わりに出ると騒ぎ立てる純さんに『黙って見てろ…純』と言うのは我らがキャプテン結城哲也さん。ここに丹波さんや増子さんが加わって……所謂、結城世代(三年生)です。

降谷『この人達…オフなのに体動かしていたのか?』
これが後に続いていくフラグなのでよく覚えておいて下さい。

地方の中学大会で沢村を見かけた時のことが礼ちゃんの口から語られます。

礼ちゃん『…私はその背中に真のエース』を見た気がしたんです』

マウンドに立った沢村の野球帽には地元の仲間達からの言葉が。
沢村『いくぜ みんな!!』
ベタですがとても良いシーンです。少年漫画はこうでなくては……そんな気分にさせられます。

 

第15話「逆襲」
まさに漫画としても「逆襲」と言える回でした。物語の序盤から空気は一転し、漫画世界全体が盛り上がるといった感じです。和気藹々とする一年生達を横目にする降谷は、中学時代、自分の球を受けれる捕手がいなかったことを思い出します。

レギュラー昇格をかけた増子透さん(三年生)登場。

 

第16話「ムービング対パワー」
巨体の増子さんに対しても沢村は真っ向勝負を挑みます。ど真ん中ストレートであるはずの球をキャッチャーが弾いてしまう──ここで様々なエピソードで語られてきた沢村の球の正体が見え始めてきます。

増子さんとの勝負に沢村は力負けするものの目を輝かせました。

 

沢村『もっと投げたい もっともっと!!』

 

第17話「夏まで二ヶ月」
点は取られたものの最後まで投げぬいた沢村。五号室はいつもの日常へと戻ります。

自動販売機前で鉢合わせする小湊兄弟。当初は兄弟という設定で考えられていなかったとはとても思えません。

自主練習場に御幸を呼び出す降谷。

御幸『もしかして沢村のピッチングに何か感じたのかな? 怪物くん♡』

語尾に『♡』入りましたぁ!!

冗談はさておき、様々なエピソードで積み重ねてきた沢村の投げる球の秘密が語られる重要な回でもあります。前々回で「ムービングってなんぞ?」と思った方も御安心下さい。ダイヤは作中で説明してくれる親切設計な野球漫画。簡単に説明しますと所謂「クセ球」ストレートからホームベース付近で動く球を「ムービングボール」と呼びます。あとはググってみて下さい。

 

第18話「日本一の山」
ある意味、第一部における役者が揃った回とも言えるこの回。

鉄壁の守備を誇る二遊間……私の人生を狂わせた『鉄壁の二遊間』こと、1番ショート倉持洋一と2番セカンド小湊亮介。

『鉄壁の二遊間』には散財させていただきました。これからも機会があればすることでしょう。元々はこの二人については二遊間萌え(コンビ萌え)でありました。作中で正反対的な二人がコンビを組んでいるみたいなことに弱いのですね。そういう意味ではダイヤは私の好きなコンビの宝庫だったりします。大きなエピソードが描かれていなくとも関係性が濃くて深いものだと伝わってくるのもダイヤの凄さと言いますか。

狂犬、じゃなくて強肩強打吠える3番センター伊佐敷純。様々な意見があると思いますが私は『ダイヤのA』の裏主人公は純さんだと考えております。『ダイヤのA』を不朽の名作にたらしめたのは「稲実戦」があったからだとも。
声優さん効果で更に好きになってしまいました。純さんの声がしない試合には一生慣れることが出来ないことでしょう。

そして不動の4番ファーストキャプテン結城哲也。死ぬほどカッコいいです!! 将棋が下手なところにとても共感してしまったり。

超重量級サード5番増子透。増子さんは現実にいたら後輩達にとって良い先輩だと思います。身近な努力の人というのは側にいてくれると心強い。

女子高生達に黄色い歓声を浴びせられている……チームを支える扇の要。6番キャッチャー御幸一也。野球と料理以外は不器用かもしれない男とはとても思えません。

三年生の滝川・クリス・優。
二軍に昇格した沢村が組む相手として登場。
所謂、死んだ目をしている頃のクリス先輩です。この人が後に聖職者のように見えてしまうから『ダイヤのA』という作品は一言では言い尽くせない魅力のある作品とも言えます。純さんが裏主人公とするならクリス先輩は作品における精神とも言える存在のキャラだと私は思います。

 

第19話「俺達の山」~第22話「捕手の役目」
沢村はクリス先輩から『この先お前がエースになることはない』と告げられます。部員達の間でクリス先輩は御幸にレギュラーを取られておかしくなったと噂される捕手でした。方や降谷は関東大会一回戦で投手として華々しいデビューを飾ります。そんな降谷を見て焦燥感に駆られる沢村に対しクリス先輩は『このままいけば3年間アイツの控えになるのは確実だな』と告げました。その言葉に対し、とうとう沢村はクリス先輩に対して感情的な言葉を向けてしまいます。しかし、クリス先輩は『俺のようにはなるなよ 沢村…』とだけ言い残してその場を去っていきました。
礼ちゃんからクリス先輩と組まされた理由を聞かされても納得のいかない沢村。そこに御幸が入ってきてしまいクリス先輩と上手くいっていないことを知られてしまいます。
沢村『俺はアンタに受けてもらいたい!』
初めて御幸と組んだ時の感覚が忘れられない沢村をなんとかなだめようとする御幸。
しかし、沢村は御幸を本気で怒らせる発言をしてしまいます。

国立トレーニングセンターへと向かう車の中、礼ちゃんは呆然とする沢村に対して御幸のクリス先輩への思いや過去を語り始めました。
トレーニングセンターには父親とリハビリトレーニングに励むクリス先輩の姿が──。

自分は「野球」を知った気でいて「野球」のことを知らなかった。

沢村は自分の失言を悔いクリス先輩に土下座で自分に「野球」を教えることを頼み込みます。

f:id:ugea9r:20180113111531p:plain

猛省した沢村はあの手この手でクリス先輩と師弟関係を築こうとします。コメディ要素が強いながらもクリス先輩の心が解け始めていくのを感じられる一連の流れにはホッとさせられるものがあったり。

 

クリス先輩は選手としての未来と現在という選択に迷い始めるのでした──。

 

f:id:ugea9r:20180113111533p:plain

 

軽く感想を書こうと思ったのですが無理でした。この第3巻に後への展開のすべてが詰まっていると言っても過言ではなかったりするからです。『ダイヤのA』をお薦めする時、必ず私は「3巻までは読んでほしい!」と頼み込みます。この巻で引き込まれるものがなかったら、それはもう仕方がないと諦めるしかないなとは。

 

我ながら途方もないことを始めてしまったとは思うのですが──とりあえずは、3巻まで記事が書けて良かったです。

 

いらすとや

www.irasutoya.com