『ダイヤのA』第2巻

『名門、青道高校に入学した沢村栄純。初日の寝坊で監督の逆鱗に触れ、最悪のスタートを切った。名誉挽回とばかりに息巻く沢村だが、遠投勝負で結果も出せず「投手は諦めろ!」と宣告されてしまう。実力者揃いの青道野球部では、一軍への道のりは果てしなく遠い!! ひたすらエースを目指す沢村の前に、さらに協力なライバル降谷が登場!!』

単行本第2巻 表4あらすじより

 

細かなことですが……とにかく1巻から背景や野球用具の描写が細かくて美しいのですね。週刊連載でこれだけの質を維持し続けるのは大変なことだと思います。原画展に何度か足を運んだのですが飾られていた生原稿には感動するばかりでした。思い出すたび目頭が熱くなります……!

というわけで、『ダイヤのA』第2巻の感想。

 

第6話「投手失格」~第13話「代打オレ!」収録

 

第7話「待ってろよ!」

唐突に登場したかのように思っていた松方シニアの東条秀明くんですが……名前だけは登場しているんですね。東条だけに。(激ウマギャグ)
『一年生で目立つ子』だった金丸がイキっている貴重なシーンの数々も楽しめます。今でこそ常識人枠の金丸ですがこの頃はスポ根枠における主人公にイヤミを言う同級生キャラなんですね。

金丸『そいつ…まだ入部も認められていない見習い部員ですから 俺達と一緒にしないでもらえます?』『いい加減気付けよ お前はもう終わってんだよ!!』

成績優秀な金丸が言うと破壊力倍増ですね! 
この回、沢村のクラスメイトに倉持の弟クンみたいな子がいるのも見逃せません。

青道野球部「王者の掛け声」
※鉄壁の二遊間が一つのコマに並んだ歴史的瞬間でもあります。

結城『俺たちは誰だ…?』
一軍選手達『王者青道!!』
結城『誰よりも汗を流したのは──』
一軍選手達『青道!!』
結城『誰よりも涙を流したのは──』
一軍選手達『青道!!』
結城『誰よりも野球を愛しているのは──』
一軍選手達『青道!!』
結城『戦う準備はできているか!?』
一軍選手達『おぉお』
結城『わが校の誇りを胸に狙うはただ一つ全国制覇のみ!!』

結城・一軍選手達『いくぞぉ!! おおおおおおお』

文字だけでもアツくなれますね!
結城世代勢揃いのコマだけで血湧き肉躍る私。結城世代の魅力については後々語っていくつもりですが絵だけで頼れる先輩達感が漂ってくるのが凄い! 素晴らしい!!

春乃ちゃん(女子マネージャー)との甘酸っぱいやりとり。
ブコメ路線に変更出来るようにしていた的なことをどこかで見かけたのですが「これはこれで悪くない……」と思ってしまうのは先生の描かれる女の子も魅力的だからなんですね。
ちなみに女子マネジでは貴子先輩推しでした。

 

第8話「同じタイプ!?」

御幸『マグレだろ 次はそううまくはいかんさ…』
倉持『るせっ! マグレでホームランが打てるかよ! イヤミなヤローめ』

これぞ2B(御幸と倉持)というやりとりの一つです。天才と常識人みたいなキャラ立てがされている良シーン。とにかく寺嶋先生はちょっとしたやりとりでキャラの性格や関係性を説明されるのが上手い。バッティングで性格を表現されているのも素晴らしいとしか。まだ何も語られていないキャラなのに何となく性格が伝わってくるのです。どうでもいいのですが『いかんさ…』って……無理じゃないですか。これが高校二年生なんですよ……もう、無理。

一軍の試合を観に行かず一人自主練習に明け暮れる沢村。

そこに沢村・御幸に続く第三の主人公降谷暁の登場!!

降谷『ま…ぶっちゃけ……自分が出ていない試合なんて興味がないし……』

反抗期だったのか何だったのか。今となっては信じられないくらいイキった口調の降谷。何度読んでも「暁……どうしたの」みたいなお母さん気分を味わえる貴重な時期でもあります。

亮さんが御幸に満面の笑みを向けているシーンも地味に貴重。

※その後、作中での絡みは殆どない二人

 

第9話「気まずい時間」
春乃ちゃんの激ウマギャグ『タイヤのエース』片岡監督のサービスシーンなど見所満載の回。どうでもいいのですが、青道高校にやってくるOBや記者ってガラが悪くないですか?この辺も地味にリアルのような、リアルじゃないような。

 

第11話「三年生の意地」
一年生のチームと二・三年生での試合。3P1コマ目に疲労困憊でタオルを被った東条くんが登場(しつこい)

一年達の台詞から東条(松方シニア)の評価の高さが伝わってきます。『東条が抑えられない打線…誰が止められるんだよ』という台詞と後の展開を考慮すると東条は中学と高校の壁を身体で感じ取っていたのだろうなと。そう思うとせつないシーンですよね。

 

第13話「代打オレ!」

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ベンチで携帯ゲーム機を遊んでいる「オレっち」が見れるのは第二巻だけ!
この辺読み返して感じるのは全体的に口調が荒いのと本格高校野球漫画として売られている現在から考えられないキャラの行動が結構あるんですよね。漫画的表現が優先されている結果、キャラ立てが成功しているように思えるので、私は初期の読み味もとても好きだったりします。

個人的に春市のデザインは衝撃的でした。目隠れキャラに木製バットを持たせる……曲者感が出ている良設定だと今でも思います!!
糸目の兄と目隠れの弟。
瞳が大きい=可愛いを構成する要素の一つなのですが、瞳を大きく描かなくても「可愛い」を表現出来るのだと小湊兄弟のデザインには感動させられました。SDキャラで並んでいるとさくらんぼみたいで可愛い。亮さんのヒッティングマーチが「キューティ・ハニー」で春市のヒッティングマーチが「さくらんぼ」なのも納得。髪色がピンクというのも最高です!

ここでお気付きだと思うのですが野球漫画なのに本格的に試合展開を描いたのは2巻に入ってからなんですね。しかも、一年生のチームと二・三年生での試合で野球知識が必要最低限のものでも読める仕上がりになっています。キャラの魅力を押し出してなんとなく野球とはこういうスポーツなんだと読者に掴ませる為のお膳立てがとにかく上手いの一言。

 

1巻、2巻と丁寧に読み返してみたのですが『ダイヤのA』は何度読んでも新鮮な面白さが味わえます。第二部を考慮して読むと感慨深いものがあったりも……。
特に東条については顔こそ描かれていなかったとはいえ大きな挫折感のようなものを味わったのかもしれない。そこから、投手復帰までの道のりを考えると第二部に続いて良かったような気持ちになれるんですよ。なかなか、結城世代の卒業が受け入れられない私でありますが。選手達の成長は素直に嬉しいし、新一年生達が積み重ねている努力が報われる時が来るのを心から楽しみにしていたりもします。

 

次回は一年トリオ(沢村・降谷・春市)が表紙の第3巻。中表紙の御幸一也が反則的にカッコいいです。確か、主線を筆で描かれているんですよね。